
はじめ
ニーハオ!中華系男子の いっ君 です。
知っている日本人もいるかもしれないが、中国には「80後(バーリンホウ)」という世代がある。日本でいう「ゆとり世代」に近い存在だ。一人っ子政策の影響で“小皇帝”のように過保護に育てられ、自己中心的で反抗的——そんなレッテルを貼られがちな世代でもある。実は僕も、その「80後」の一員なんだ。
同じ代名詞を持つ日本の「ゆとり世代」には共感できる部分が多いので、今回、連続ドラマ『ゆとりですがなにか』の劇場版をAmazonプライムで観てみた。
あらすじ
「野心も競争意識も協調性もない」と揶揄(やゆ)されてきた「ゆとり世代」の男たちも30代半ばに差しかかり、それぞれ人生の岐路に立たされていた。夫婦仲も家業の酒屋もうまくいかない坂間正和、いまだに女性経験ゼロの小学校教師・山路一豊、中国での事業に失敗して帰国したフリーターの道上まりぶ。働き方改革、テレワーク、多様性、グローバル化など新しい時代の波が押し寄せる中、ゆとりのない日々を過ごしながらも懸命に生きる彼らだったが……。
感想レビュー
映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』の脚本は、『ふてほど』でも知られる宮藤官九郎。社会問題を巧みに取り込み、数々の話題作を生み出してきた名手だ。しかし本作に関しては、正直に言うと期待外れだった、というのが僕の素直な感想だ。
その前にちょっと脱線するけれど、ドラマ版が2016年放送だったと知って衝撃を受けた。あの名作からもう10年も経つなんて…時の流れが早すぎる。
しかも今はもう「ゆとり世代」の出番ではなく、完全に「Z世代」の時代になっている。僕のような「80後」からすると、ゆとり世代の余韻はもっと続いてほしいなと感じた。
さて、映画の本題に入る。『ゆとりですがなにか インターナショナル』というタイトルからして、まず「インターナショナルって何?」と疑問を抱いた。
観終えてようやく意味が分かった。コロナ以降の世界で、日本の“ゆとり世代”の存在感が弱まり、経済不調の影響が強まる中、主人公・坂間正和(岡田将生)の元職場が韓国企業に買収されていたという展開から、その“インターナショナル化”が語られるわけだ。
ただ、この“韓国絡み”でインターナショナル感を演出するのは、ちょっと無理やりだな…と僕は納得しきれなかった。
最新トレンドは日本酒ではなくマッコリとノンアルだ、という描写も出てきて、坂間家はノンアル日本酒の開発に奔走することになる。
さらに、坂間の友人にも“インターナショナル”な展開がやってくる。
例えば、道上まりぶ(柳楽優弥)は中国でエビチリ店を経営するも失敗し、坂間家に“潜伏”。中国人向けYouTuberとして活動し始める。中国語まで流暢に喋るのだが……中国人の僕から言わせてもらうと、柳楽優弥の中国語は本当に聞き取れなかった。字幕がないと何を言ってるのか分からないレベルで、そこは練習してほしかった。
一方、山路一豊(松坂桃李)の“インターナショナル要素”はさらに強引だった。勤務先の小学校に、日本語が分からない外国人の転校生が突然やって来るという、現実ではほぼ起きない展開。さらに、小学生を前にLGBT教育を語るシーンは大胆すぎて、セリフの内容も年齢にそぐわずツッコミどころ満載だった。
山路の元カノ・佐倉悦子(吉岡里帆)が外国人受け入れのシェアハウスを運営している描写も、コロナとこじつけた感じが否めない。
とにかく、“インターナショナル”を詰め込むためなら何でもアリなのか?と思ってしまう場面が多かった。
もちろん、劇場版とはいえ110分の中に『ゆとりですがなにか』シリーズらしいドタバタ感は残っていて、その点は評価したい。ただ、あのドラマから10年も経っているので、人物関係の記憶がかなり薄れていた。
もう少しドラマ版の回想を丁寧に入れてほしかった。僕の場合、映画の中盤になってようやく人間関係が整理できたほどだ。
坂間茜(安藤サクラ)が夫と同じ職場だったこと、山岸ひろむ(仲野太賀)が“ゆとりモンスター”と呼ばれていたことなど、懐かしいキャラがそのまま登場したのは救いだった。
一方、新キャラは印象が薄く、特に教育実習生の望月かおり(上白石萌歌)は、山路の童貞ネタのために登場したような一瞬の存在で終わってしまった。
以上が僕の感想だ。
10年前にハマっていた『ゆとりですがなにか』を、何の復習もせず観に行った僕にも責任はある。だが、それでも劇場版の“インターナショナル”要素についていけず、映画終盤まで印象的なポイントがあまり見つからなかった。
最後に強いて本作品の内容をまとめるなら——
まりぶによる坂間家の人間観察YouTube動画を延々と観ているような映画だった(笑)
ビッグダディのアップデート版として観れば、すっと入ってくるかもしれない。
作品&キャスト情報
- 原題:『ゆとりですがなにか インターナショナル』
- 公開年:2023年10月
- 監督:水田伸生
- 脚本:宮藤官九郎
- キャスト:
坂間正和:岡田将生
山路一豊:松坂桃李
道上まりぶ:柳楽優弥
坂間茜:安藤サクラ
山岸ひろむ:仲野太賀
佐倉悦子:吉岡里帆
チェ・シネ:木南晴夏
麻生厳:吉田鋼太郎
参考記事
もしよければ、下記の映画感想レビューも書いているので、合わせてチェックしてほしい。セットで読んでもらえたら、すごく嬉しい!