
はじめ
ニーハオ!中華系男子の いっ君 です。
話題のアニメ映画『ルックバック』。中国での公開時のタイトルは「驀然回首」という四字熟語になっている。これは、宋朝時代の詩人・辛棄疾の詩から名付けられたもので、「ふと振り返る(少女)」という意味を持つ。すごく意味深く、考えさせられるタイトルじゃないだろうか。
余談話は以上で、遅ればせながら、Amazonプライムビデオで『ルックバック』を鑑賞したので、感想を書いてみた。
ストーリー
小学4年生の藤野は、学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトから好評を得ていた。ある日、教師から不登校の京本の漫画も掲載したいと提案される。こうして出会った二人は、漫画への情熱を共有しながら成長していく——。
感想
こだわりが詰まった映像美とストーリー
本作は、押山清高監督が脚本・キャラデザインまで手がけた作品。独特な画風や繊細な描写、キャラクターの表情へのこだわり、そして心に響くセリフの数々…。最初から最後まで、丁寧に作り込まれているのがはっきりと伝わってくる。だからこそ、アニメの世界に没入しやすく、また、かつて友を求めていた自分と重ねてしまう瞬間も多々あった。
まさに、心が熱くなる青春アニメだった。
(2025年のアニー賞を逃したのが本当に残念すぎる…!)
主人公二人の絆とすれ違い
主人公の藤野と京本。二人とも強い個性を持つキャラクターだ。最大の見どころは、彼女たちの絵に対する情熱、そしてそれが生んだ絆と純粋な友情だと思う。
藤野は、漫画を描くのが夢で、絵の才能に自信を持つ少女。地元でも評価されることが多く、周囲から期待される存在だった。しかし、ライバル・京本の登場によって、藤野の世界は大きく揺らぐ。京本の絵の実力を目の当たりにし、自信をなくした藤野は、ひたすら絵を描き続ける。しかし、どれだけ努力しても京本には敵わないと感じ、さらに追い詰められていく結果、それまで続けていた4コマ漫画をやめることにした。
そんな中、卒業証書を届けるために京本の家を訪ねた日、藤野の運命が変わる。
まさかの事実――京本は藤野のファンだった。人と関わるのが苦手だった京本は、藤野のおかげで初めて勇気を出し、家の外へ踏み出した。この時点で、二人は特別な絆で結ばれる運命だったんだなと感じた。
京本は、憧れの気持ちから自然と藤野の後を追うようになる。藤野のためなら漫画の背景を描くし、外が怖くても、藤野の背後にいれば大丈夫。なんて優しい子なんだろう…。
京本の存在があったからこそ、藤野は再び自信を取り戻し、漫画を描き続けることができた。ライバルだった二人が、いつしかかけがえのない親友になっていく。藤野は京本に認められたかったのかもしれない。だからこそ、彼女がいつも後ろにいることを、無意識に願っていたんじゃないかと思う。
しかし、京本が美大を目指し始めたことで、二人の友情に亀裂が入る。京本を独占したい気持ちもあったのか、藤野はつい彼女を突き放すような言葉をぶつけてしまう。でも、それは本心じゃなく、ただ京本を手放したくなかっただけなんじゃないかとも思えた。
絵を通じて生まれた友情が、絵のせいで壊れてしまうなんて、なんとも切ない話だ。
クライマックスの衝撃と余韻
そして迎えたクライマックス。京本の突然の死を知った藤野は、すべて自分のせいだと泣き崩れる。
そんな中、ドア越しに4コマ漫画の紙が登場し、再び「運命」が動き出す。
京本の視点から見た、もし藤野と出会わなかった世界。そこでは、京本は一人で美大を目指し、努力し続けていた。でも、彼女の運命は変わらなかった。不審者による殺人事件に巻き込まれてしまう。
だけど、その世界では、空手ができる藤野が京本を助けていた。ここで再び、漫画という「言葉」を通じて二人の絆が繋がりそうになる。この世界なら、二人は幸せなまま、一緒にいられたのかもしれない…。そう願わずにはいられなかった。
でも、現実の世界では、藤野は一人のまま。それでも、京本が残した4コマ漫画を通じて、前を向く決意をする。
切なくて、苦しい友情の物語。でも、藤野は京本の分まで生きていくと決めた。その姿に胸を打たれた。最後の最後で勇気をもらえる、そんな心に響く作品だった。
作品&キャスト情報
スタッフ・キャスト
- 原題:ルックバック
- 公開年:2024年6月
- 配給会社:エイベックス・ピクチャーズ
- 興行収入:約20億
- 監督/脚本/キャラクターデザイン:押山清高
- 原作:藤本タツキ
- 脚本:押山清高
- アニメーション制作 スタジオドリアン
- 声優:
藤野:河合優実
京本:吉田美月喜